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なぜリーダーにコーチングや対話が必要なのか? ~ 固定観念を解きほぐすために、日常を『逆』にしてみる
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なぜリーダーにコーチングや対話が必要なのか? ~ 固定観念を解きほぐすために、日常を『逆』にしてみる

[更新: 2017年03月15日 / カテゴリ: リーダーシップ・コーチング]

「認知的けち」 とは?

どなたにも経験があると思いますが、多くの方が歳を取るにつれ「最近は年月が早くすぎてゆきますからねえ」という話をするようになるのは何故でしょうか?その理由は、現実の五感の情報を、過去から蓄積してきた固定観念や固まった思考方法によって、自動的に処理してしまっているからです。言い換えるならば、自分を毎日「同じ環境」に置き、自動的に過ごし、「同じ問い」だけを投げかけていれば、その人の人生は変化することなく過ぎていきます。
これまでと違う思考や人生を手に入れるには、これまでとは違う問いを自分に投げかける必要があります。新しい問いは、新しい思考になり、新しい思考が新しい行動につながるからです。しかし、それが頭ではわかっていても、なかなか実行に移せません。現状を変えずに、十年一日の如く過ごしてしまうのが人間の性だと言えるでしょう。では何故、人間は楽な現状に留まることを選ぶのでしょうか?これは、心理学では「認知的けち(認知的倹約家)」という現象として知られています。人が何らかの認知や情報処理を使用とする場合、複雑で難しい認知的処理よりも、少ないエネルギーで単純で簡単な認知的処理と判断を行う傾向がある、という現象を指しています。今までのやり方を無意識に踏襲する。これは考えるエネルギーを節約する「認知的けち」に最適なやり方なのです。つまり、人の心は、できるかぎりものを考えずにすむよう作られているのです。

組織の日常に潜む「認知的けち」とそれが及ぼす影響

この「認知的けち」の現象は、働く日常にもしっかりと潜んでいます。組織に染まった人は、その時点で組織が持っている価値観に対して揺るぎのない確信を抱く一方で、それとは違うものを知らず知らずのうちに排除したり忌避したりするようになります。あるいは、自分が既に身に付けた知識や技術に束縛されてしまい、新たな『仕事の型』を獲得することや、仕事のやり方を変えることを億劫に感じるようになっていきます。よく、OJTや研修などで、「人を組織に順応させることに成功した」 あるいは、「新しく参加した人が組織に順応し、組織文化の一部として馴染んだ」ということが言われます。もちろん良いことではあるのですが、もう一方では「変化を嫌う頑迷な個人を作ってしまった」という可能性も潜んでいるのです。しかも周囲はもちろん当の本人もそのことに気付きません。企業の特殊な価値観や知識・技術に対する『文化的無自覚性』を既に獲得してしまっているからです。

望むと望まざるに関わらず、企業で働く人は、暗黙のうちに、その場で支配的な枠組みの自ら囚われていきます。その結果、果てしない定型業務と惰性化の中で、『ものの見方(パースペクティブ)』が固定化し、ステレオタイプ化していきます。ビジネスパーソンが、会社という組織に適合し、その中で成長していく中で、『変化の創出』や『変化への適応』を無意識に忌避するようになる、と言うのは、実に皮肉な現象であると言わざるを得ません。 この事は個人にとってもリスクです。今属している組織が未来永劫にわたって安泰であるのなら、それに順応することは、その人にとっての『成功』を意味するかも知れませんが、絶え間なく変化する「VUCA【Volatility(不安定)Uncertainty(不確実)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)】な時代の中では、 外部環境の激しい変化によって組織は常に再編、再構築されるのが常態化しています。常に変化するのが当たり前の状態になっています。異なる組織が合併したり、自分の所属する組織が一瞬にして消失したりすることも当たり前になっています。このような環境においては、ある組織に過度に順応し、そこの固定観念を甲冑のように身にまとい、そこでしか働けなくなってしまった個人は多大なリスクを負うということを意味しています。

日常から離れ、解きほぐす

そのような環境のもとでは、過去に学んだことや身に付けた『仕事の型』『リーダーとしての考え』をもう一度自ら見つめ直し、資産として獲得してしまったステレオタイプを『一旦横に置き、解きほぐす』ことが求められます。では、知らず知らずのうちに人々に染みついた思考形式を一旦横に置き、解きほぐすためには何が必要なのでしょうか。それは次のような環境における『対話』がその答えの一つになり得る、と思います。

1)普段考えていることや本音をそのまま共有しても良いと言う『心理的安全』が確保されている場
2)多様なものの見方が共有される場
3)答えを押しつけられず、物事の意味や形を自ら一旦解きほぐし、整理し、再構築することができる場
4)『ゴールとアジェンダのある会議』といった定型化されたコミュニケーションスタイルから自由になれる場
5)それゆえ、必ずしも自分の考え通りの予想できることだけが起きるわけではない場
6)『すっきり感』よりも、さらに自分で考え続けるための材料が自分の中に残る、良い意味での『モヤッと感』

実は、これが『対話』=『コーチング』の場、そのものであり、自らの思考をリリースし、思考を整理し、そして新しい第一歩を踏み出すことにつなげていく場なのです。

コーチングは日常を『さかさま』にした場

そして不思議なことに、上記の1)から6)迄をすべてひっくり返したところに存在するものが、一般のビジネスパーソンが日々会社で過ごしている日常の風景にほかなりません。前出の1)~6)と対比させる形で書いてみましょう。

1)階層的な権力関係に服従して、自分の立場を守りながら発言すること求められ
2)好むと好まざるに関わらず、組織価値・組織文化に順応した比較的画一的なものの見方をすることが要求され
3)価値判断や物事の意味は自らの価値観と言うよりも上意下達で定義・伝達され
4)コミュニケーションにおいては、MECE的(もれなくダブりもない)で論理性を追求した思考と議論が良しとされ
5)比較的定型的な、お決まりの流れが予測でき
6)その場における、唯一の絶対解を求めることを良しとする

いかがでしょうか?人によって差はあるかも知れませんが、多くの人がこう言った状況におかれて、ここに求められているようなコミュニケーションの支配する日常の中で、日々の仕事に奮闘しているのではないでしょうか。もちろん、こう言った組織環境・文化・コミュニケーションの中で、スピードを重視しつつ業務を遂行することに、問題があるわけではありません。
しかし、過去に学んだことや身に付けた『仕事の型』や『思考の型』をもう一度見つめ直し、問い直し、凝り固まった『ものの見方』を解きほぐして再構築するためには、日常をひっくり返す場、あるいはまったく自分とは異なる考え方と接する作業が必須なのです。自らの思考を呪縛するものに自らが『裂け目』を入れることが必要なのです。

コーチングとは、日常と真反対の場に身を置いて、『対話』を通してコーチと一緒に考える作業だと言えるでしょう。
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