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優れたリーダーシップで誤った戦略を正しく実行していませんか?
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優れたリーダーシップで誤った戦略を正しく実行していませんか?

[更新: 2023年12月19日 / カテゴリ: ビジネス・コーチング]

リーダーシップは、ビジネスの文脈の中で産み出させるべきものであり、その中で洗練・熟達されるべきもの

ビジネス戦略とリーダーシップは、切っても切り離せない存在であるにもかかわらず、ビジネスの文脈から、あたかも臓器移植のようにリーダーシップだけを取り出して、観念的かつ形而上的なコーチングの問いかけを重ねても、一見リーダーシップが向上したような気になるが、ビジネスの現場では役に立たない机上のリーダーシップを自己満足的に肥大化させているに過ぎません。畳の上で水泳を学んでも、波のある海では役に立たないのと同じです。「あなたはどうしたいのですか?」と言った純粋無垢すぎるコーチングの教科書的な問いかけとその答えが、生臭いビジネス的な現実の文脈で実践的に役に立つことはほぼ無いと言って良いと思います。これはコーチングを否定するものでは当然ありませんが、ビジネスコーチングやリーダーシップコーチングにはビジネスの視点、ビジネス戦略の視点が不可欠であり、コーチ側がコーチとビジネスコンサルティングの帽子を瞬時に被り変えながらセッションを進めることが肝要です。今回は、ビジネスコーチング、リーダーシップコーチングにおける、コーチ側の戦略への理解という点について、書いてみることにします。

戦略とは呼べないものが大手を振ってまかり通っている

ビジネスコーチング、リーダーシップコーチングを提供する中で、クライアントのビジネス戦略をヒアリングするところからスタートするのですが、最近の顕著な傾向として、とても戦略とは呼びがたいものが、戦略として扱われているケースに非常に多く遭遇します。特に、単なるビジネス目標や空疎な文言や精神論が「戦略」という名の皮を被っているだけのケースが非常に多いのです。以下に例を挙げます。(もちろん、業種・業界名や内容などは抽象化・変えてあります)

とあるITサービス事業者のビジネスコーチングで、その会社の戦略は「我々の基本戦略は、顧客中心の使いやすいITサービスを提供することである」と説明されたが、それは戦略ではなく、自分達は単なるいちITサービス事業者に過ぎないと自称しているに過ぎないケース

精密機器メーカーの部長に事業戦略はと尋ねたら、「高品質で高精度な精密機器を提供し、顧客の満足度を高める」という文言が返ってきたことがある。これは、我々は単なる精密機器メーカーですの言っているのと何ら変わらない内容を戦略として掲げて憚らないことに気づいていないケース
あるいは、
「売上を倍増する」
「ユーザー数を3年後に1.5倍にする」
「首都圏における店舗数を300店舗」
「3年以内に3社を買収し規模の経済を追求する」
といった単なるビジネス目標や単なる規模の拡大だけを戦略と称しているケースは実は多く、そしてご本人達がそれが戦略だと心から信じて疑わないケース。
そして、そういった高いビジネス目標を掲げて、精神論の連呼とポジティブ思考と従業員のモチベーションを上から操作して高めておけば、目標は達成されると信じて疑わない経営トップが実に多いのです。
また、いわゆるちまたに流通するビジネスプランの穴埋めテンプレートに
1.ビジョン
2.ミッションステートメント
3.核となる価値観
4.戦略目標
5.イニシアチブとアクションプラン
といったそれぞれの穴埋め項目に、決して検討が十分とは言いがたい箇条書きのお決まりのフレーズを流し込んだだけの代物が事業戦略プランと名付けられ、
事業のトップが胸を張って戦略説明会と称して精神論を全身全霊で連呼するだけの場に立ち会ったこともあります。このパターンは一見見栄えが良いため、あたかもご本人達が至極立派なものを作った気になりがちな点が非常に危険だと言えます。
または、部長クラスにビジネスコーチングを提供している中で、「御社のこの事業の全体戦略を説明してください」と問いかけても言葉に詰まって答えられなかったり、前年比●●%成長ですと数値目標をあたかも戦略であるかのごとく胸を張って答えたり、あるいは自部門の単なるビジネスオペレーションの説明に終始したり、事業戦略とまったく無関係と言っても過言ではない離島のような視点で組織運営を行っていたり、または事業戦略をまったく自分の言葉で咀嚼できていないケースや、さらにひどい場合には、全体の事業戦略そのものが戦略と呼べるような内容とは乖離しているケースを非常に多く目にしてきました。
さらに、そういった方々にいわゆる中期経営計画を見せてもらうと、単に希望的観測と手なりの予測に基づいたこれぐらい出来るといいなという棒グラフの中身が、
1.不十分な市場分析
2.戦略的意図の不在
3.本来の戦略を支えるべき組織設計、職務設計、それを支える人事制度の視点の欠如
3.その上で、求められる人材像が曖昧模糊
といったように、必要な要素すら検討されていない、単なる占いや願望を棒グラフしたに過ぎないケースも列挙に暇がありません。

または、先入観や目先の短期的な問題や利得に重心が置かれすぎた近視眼的な視点で視野狭窄に陥った立派な体裁のビジネスプランを目にすることも非常に多いのです。
弊社にも、ビジョン立案や従業員に響くようなパーパスを打ち立てたいので支援してほしいという依頼をいただきますが、多くの場合はその事業の全体戦略が不在であるケースが非常に多いのが実情です。そして、そういった美辞麗句を並べた耳障りの良いビジョンやパーパスさえ作れば、卵が孵化するかのごとく自動的に優れた戦略が産まれてくると考えているようなケースに遭遇することさえあるのです。格好いいビジョンやパーパスはあくまでコミュニケーションの道具に過ぎず、根源的には耳障りの良いビジョンやパーパスはまったく不要であり、ビジョンやパーパスよりも、優れた戦略が何よりも先であり、最も重要であることは言うまでもありません。ビジョンやパーパスは戦略が狙い通りに機能した挙げ句に達成される姿や企業の役割であるにもかかわらず、ビジョンやパーパスを戦略コアよりも先に考えるという順番には疑問を感じざるを得ません。

今年も様々な業界のリーダーの皆様方に、数多くのコーチングセッションを提供してきましたが、上位の事業戦略をしっかり理解・咀嚼した上で、批判的思考でその戦略を一度疑い、思考実験で検証し、必要であれば、上位組織に逆提案を行ったというマネージャーには残念ながら多くは出会えなかったというのが実感です。

「ビジネスは人だ」と言われますが、それは半分正しい

ずばり申し上げて、優れた人材育成と優れたリーダーシップで、不十分に検討された戦略を実行するのは不幸な姿です。正しいリーダーシップで、誤ったビジネス戦略の上で誤ったビジネス判断をするのは、最たる悲劇です。優れた戦略を優れたリーダーシップと正しいスキルを持つ人材で実行するのが、正しい姿であることは言うまでもありません。

弊社のビジネスコーチングの思想

弊社のビジネスコーチングは、一般的なコーチングとは一線を画します。リーダーシップのみを取り出して扱うことはしません。必ず、ビジネス戦略のヒアリングからスタートし、その文脈の中でのリーダーシップに焦点を当てます。そして、その文脈と背景であるビジネス戦略そのものも同じ重要度で扱います。それは、正しいリーダーシップとスキルで誤ったビジネス戦略を正しく実行してしまう不幸を避けるためなのです。
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