個人が会社を雇用する時代に? ~ 働き方のパラダイムシフトとキャリア自律
[更新: 2017年03月08日 / カテゴリ:
キャリア自律]
今回は少しエッセイ風です。最近感じていることを書くことにします。ここ最近、身の回りで起きていることを観るに付け、会社が個人を雇用するという今までの既成概念がいろいろな意味で大転換するのが今年2017年のような気がします。以下に、その考えを記すことにします。
確かに、⽇本⼈は「1⼈当たりの⽣産性」が低すぎるという厳然たる事実があることは否めません。日本生産性本部の2016年の調査によれば、「日本人の生産性」は先進国で19年連続最下位であり、OECD加盟国34ヵ国で第21位という現実があります。しかし、最近言われている働き方改革は、「長時間労働を是正し、生産性を高める」という点だけにフォーカスが当てられすぎているのではないでしょうか。
つまり、『生産性を上げる』=『労働時間を短くする』というのはあまりにも短絡的で画一的ではないでしょうか。そういった画一的な発想から脱却する時がまさに訪れていると思います。一人一人が、それぞれの働き方を、置かれた状況や価値観をもとに「主体的に」「個別」に考え、柔軟に「最適化」することが求められています。一斉に『長時間労働を是正しろ』 、『金曜日は一斉に就業時間を早めて消費しろ』というのは、いまだに画一性、没個性、硬直化の中から脱却できていないことの証左だと考えます。
また、それを裏返せば、「働き方」が柔軟になる分だけ、働く側には「強い意志」をもって仕事をすることが求められるとも言えます。つまり、「働く側の一人一人が、自分の働き方を自律的に考え、自ら強い意志をもって実践することができるのか?」という問いを突きつけられているのではないでしょうか。そして、「働き方の柔軟化」は「働く側の強い意志」とセットでなければ、むしろ「労働生産性」が低下する可能性が高いと考えています。最悪の場合「労務問題」を引き起こしたり、「低い成果」に甘んじる結果につながってしまいます。画一性、没個性の中では、主体的な取り組みはあり得ません。
自分の仕事と生き方をデザインすることに、本当にすべての「働き手」が向き合えるのか?
強い意志をもって、自分の仕事をやり切ることに、本当にすべての働き手が向き合えるのか?
最近企業の経営者が、残業ゼロ目標を口にする例を時々目にします。あれほど社員の長時間労働を是とし、社員にそれを強いてきたことで有名大手企業ですら、トップが2020年までの残業ゼロを宣言しているのです。働き方改革時代にはもちろん「会社の姿勢」も問われていますが、それと同様に「働く側の覚悟」も問われているのではないでしょうか。もはやキャリア自律というのは決して聞き心地の良い夢物語や、青い鳥を追いかける話でもありません。キャリア自律というのは既に「働く側の覚悟」というフェーズに突入しているのです。
さらに言えば、それは『会社と従業員の関係の見直し』、言い換えればもっと緩やかな雇用関係の構築ということにつながるのではないでしょうか。すなわち、これからは働く側が企業の関係を見直すということがごく普通のことになると捉えています。そして、2020年までには、個人が自分の生き様を実現する一つの手段として、逆に個人が会社を雇用するという図式に変わっていくのではないでしょうか。つまり、従業員は仕事の効率を上げ、仕事が終わればいつでも会社から出られるような環境になる。退社後は副業で稼ぐのも自由、習い事でスキルを高めてもよし、家族との時間を楽しむのも自由。金曜日に限らず仕事が終わったら3時から美味しい料理とお酒を楽しむも良し。カイシャで成果をあげる人は賃金が上がるけれど、そこそこの仕事でよしとする人は、それなりの給料でよしとする。週に5日働く人もいれば、週に2日だけ仕事する人もいる。在宅勤務ももちろんOK。プロ並みの腕前を持っている趣味の世界があれば、セカンドプレイスどころか、サードプレイス、フォースプレイスをそれぞれ生き甲斐として実現する人もどんどん増える。その中の一つに会社という存在がある。こういった働き手と会社の緩い関係があたりまえになるのではないでしょうか。現に、既にオプショナルな業務形態・雇用関係導入に取り組んでいる企業も増えてきています。
日本の社会は同質性に対する求心力と依存度が高い傾向があるので、言うまでもなく全員が上記のような流れを志向することはないでしょう。結果として、望むと望まざるに関わらず、従来のままの『会社との雇用関係』を選択する人もたくさん残ることでしょうし、それを否定するつもりは毛頭ありません。個々が異質に挑戦し、自己を解放し、自分の道は自己責任のもとに自分で自律的に決める。そういう社会に変わっていけるかどうかという分水嶺にさしかかっているのではないでしょうか。
また、それぞれが会社から解き放たれる結果、国民一人一人が有効に時間を使えるようになり、社会全体でみて生産性が上がる、そして新しい産業が生まれる。生産性の上昇に伴って緩やかながらも自然な形で収入が増え、必然的にインフレに誘導される。日銀が目指している無理矢理インフレ施策よりも、こちらの方がはるかに有効なインフレ誘導の正しい道筋ではないでしょうか。長い間当然と考えられてきた会社と従業員の関係の再構築。意外とこれは日本経済の進む正しい方向ではないのでしょうか。
ここで書いていることを、誤解を怖れずに言えば、『脱 会社』と表現できるかもしれません。このBlogの別項の
こちらに書いたように、単なる趣味の世界を超えたセカンドプレース、サードプレースの存在もどんどん当たり前になってきています。端的に言えば、自分の人生に自分で責任を持つという意味で、個人事業主が自分にフィットする働き場所と働き方の一つとして副業と会社が同列のように存在するいう視点です。この大きな潮流の中における『新しい働き方』とは果たしてどのようなものなのでしょうか?そして、それを前提とし、『働く場をやりがいと共に提供する会社のあり方』とはどのようなものなのでしょうか?WorldArxは、キャリア自律という観点から、皆さんと一緒に考えて行きたいと思っています。