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プレイングマネージャーは会社都合の単なる必要悪なのか?~キャリア自律の視点で考える

プレイングマネージャーは会社都合の単なる必要悪なのか?~キャリア自律の視点で考える

[更新: 2017年08月03日 / カテゴリ: キャリア自律]

圧倒的な人手不足と人件費削減により、プレイングマネージャーは増えている

厚生労働省が発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.49倍と、1974年2月以来43年3カ月ぶりの高さを記録し、なかでも正社員の有効求人倍率は調査開始以来、最高を記録しています。また、完全失業率(同)は3.1%と低水準となり、企業の人手不足に一段と拍車がかかっていることが浮き彫りになっています。圧倒的な人手不足と人件費削減により、いわゆるマネジメント業務を行い、部下を持ちながらも、自らもプレーヤーとして成果を求められる、マネージャーとプレイヤーの両方の立場をこなさなくてはならないプレイングマネージャーが増えています。この立場にいらっしゃる方は、総じてその大変さ、困難さを感じていらっしゃるようで、お話を伺うと堰を切ったように不平不満のオンパレードという感じになります(苦笑)

プレイングマネージャーはつらいよ

では、プレイングマネージャーの何が一番困難な部分なのでしょうか?なぜ大変なのでしょうか?もちろん最もわかりやすい点としては、やるべきことが多い点であったり、業務時間が長くなりがちだったりする点ですが、実はその役割を最も難しいものにしている要因は、マネージャーとプレーヤーそれぞれの立場の時にやるべきことが全く異なるという点だといえるでしょう。プレイヤーとしての責任とリーダーとしてのチームをまとめ、引っ張るという2つの役割を両立させる上で、その2つを上手に切り替えながら両方の立場をこなすことは至難の業です。そして、至難の業であるどころか、2つの立場を混同すると周囲によくない影響を及ぼすことすらあるのです。

その異なる立場を混同することが引き起こす2つのケースを見てみましょう。
●なぜ俺のようにできないのだ?型プレイングマネージャー

プレーヤーとして優秀な人がリーダーを任され、さらにプレイングマネージャーになった場合に多く見受けられるケースです。プレーヤーとして優秀な人がプレイングマネージャーになった場合、部下に仕事を任せたり、部下の仕事を黙ってみていることができません。何しろ自分自身は仕事が大好きで、仕事がデキるわけですから、部下の試行錯誤をじっと我慢して見守ることは苦痛でしかないのです。部下の仕事を取り上げ、鮮やかな手さばきで片付け、そしてこう言います。「どうして君は僕がやるようにできないの??」これを言われた部下はたまりません。部下のモチベーションを下げるのみならず、部下の成長の機会を奪ってすらいます。そして、多くの部下がこう思い始めます。「そんなに頑張らなくてもいいや。どうせリーダーが助けてくれるか、あるいは我慢できずにやってくれるだろう」そう思う部下が一人、そしてもう一人と増えていきます。いわゆる集団手抜きです。その挙げ句に、プレイングマネージャーがメンタルになってしまうケースすらあります。

弊社が実施するリーダーシップワークショップでは、「あなたにとってリーダーとして重要だと思う要素に優先順位をつけてください」という内容で事前の意識調査をよく行います。実はそこで常に上位にランクインしてくるのが「率先垂範」というキーワードです。もちろん、率先垂範はリーダーにとって重要な要素です。しかし、行き過ぎた率先垂範は部下の成長の機会を奪っている可能性があるという側面もよく考慮すべきでしょう。デキるプレイングマネージャーほど、手を出してくのをぐっとこらえて、任せてやらせて、その結果を一緒に振り返ればよいのです。振り返りの時に、プレーヤーとしてのやり方や考え方を部下と共有することは部下を育てるという観点から大いに有効だと言えるでしょう。


●逃げ・言い訳型プレイングマネージャー

プレイングマネージャーは、プレイヤーとしての責任とリーダーとしてのチームを引っ張るという両方の立場を持つわけですが、残念なことに、マネージャーとしてやらなくてはならないことができていない場合に「私はプレイングマネジャーだから」と言ってプレーヤーの立場が逃げ場として機能しているケースが少なからずあるようです。端的に言えば、自分のマネジメント能力の低さや忙しさにかまけている部分をを「プレーヤーである」ということを言い訳に使い、ごまかすケースが散見されるからです。こうなると、実質的にはリーダー不在となりますから、チームの士気は下がります。
あるいは、プレーヤーとしての立場として物事を見る癖から抜け出せず、部下と一緒に会社の悪口を言い続けたりするケースもあります。部下からは仲間意識を持たれ、単なる仲良しクラブの中の兄貴分のような存在になったりしますが、これも結果的にはリーダー不在の状況ですから、チームが困難な状況に直面したりした場合には、非常に厳しい事態に発展することになるでしょう。

一方で、これらの状況は一方的にご本人たちを攻めるわけにもいかないのです。プレイングマネージャーを任命するときに、会社側がきちんとしたリーダーシップのあり方とプレイヤーとマネージャーのやるべきことの違いなどをきちんと伝えるトレーニングを怠っているケースも多いようです。

プレイングマネージャーは会社都合の単なる必要悪なのか?

では、プレイングマネージャーはただひたすらに大変な任務だ。解決すべき課題は多い。果たしてそれで済ませてよいのでしょうか。非常に興味深いエピソードがありますので、ご紹介しましょう。

外資系企業のとあるマネジャーの方に「部下に仕事を任せ、部下を育てる」という内容でお話を伺う機会があったのですが、その方曰く、「部下を育てるという話とは少し矛盾するように聞こえるかもしれませんが、部下に仕事を100%任せるのはダメだと思うんですよ。ずるい考え方かもしれませんけど、将来の自分のキャリアへの保険だと思って、10%は自分のための仕事として取っておくんです。」
その方は非常に優秀なマネージャー(専任)の方で、いわゆるプレイングマネージャーではない立場なのですが、現場感覚を失うことが自分のキャリアにとってリスクになるということを非常に意識されている方です。その人によれば、部下育成のために仕事を任せるというのはもちろん実践してはいらっしゃるのですが、激変する市場動向を肌で感じ、最新の技術を着実に理解し、現場感覚を忘れずにいるためには、任せるばかりではだめで、自分でやる部分を残しておかなくてはいけないということでした。この話にはさすがに目から鱗が落ちました。つまり、やりようによっては、プレイングマネージャーという任務を長期的なキャリア開発の観点で逆手にとることが出来るということです。

プレイングマネージャーのありかた ~生涯現役へ

確かにプレイングマネージャーは大変な職務であることは事実でしょう。しかし、先述の「10%保険理論」の観点で考えてみると、マネジャーとして、経営側からの視点を持ち、チームをまとめ、リードし、さらにプレーヤーとしての目線で現場ともちゃんと接点をもっていたほうが、長期的に見てキャリアのリスクは低くなるということが言えるのではないでしょうか。もちろん、部下の仕事を取り上げるわけでもなく、自分もプレーヤーとしての部分を残し、現場との接点を保ちつつ、経験に裏打ちされた自分なりの視点を身につけていくことが重要だと言えるでしょう。

厳しい見方かもしれませんが、これからの時代は好むと好まざるに関わらず、常に誰でも現場復帰の可能性があります。むしろ、人生100年の時代にあっては、長く細く働くことが当たり前になり、現場感覚を全く失った専業マネージャの方がリスクだとも言えるでしょう。

いつも「自分の仕事のあり方を考えている」人だけが、仕事のあり方を変えていけるのです。
プレイングマネージャーが2つの異なる役割を意識的に使い分け、そしてそれをキャリア自律の視点で自らのキャリア開発の一部として捉える。
御社でも考えてみませんか?

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