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あなたの"I think"誤解されてませんか ~2020メキシコオープン最終日13番ホールにて
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あなたの"I think"誤解されてませんか ~2020メキシコオープン最終日13番ホールにて

[更新: 2020年02月25日 / カテゴリ: グローバル・コミュニケーション]

2020年 WGC-メキシコオープンゴルフの最終日にて

さて、何かと息苦しい昨今、今日は少し柔らかめの話題を引き合いに出して、一つトピックを。

2020年に開催された、WGC-メキシコオープンゴルフの最終日での一幕です。

首位を追いかけるJustin Thomasが13番ホール 225ヤードのPar 3で7番アイアンを握り、放ったショットが大きく左に曲がってバンカーの淵に止まったのでした。二打目のためにバンカーの淵まで行き、ライを確認するためにボールの近くで素振りをしてアドレスを取ったJustin Thomasは、ボールが少し動いていることに気づきます。バンカーの淵は、傾斜になっている上にボールが芝生の上に浮いた状態だったために、ボールが少しずつ動いているのです。(これはテレビ映像でも確認できました)このまま打つと、ペナルティーになるのではないかと案じたJustin Thomasは早速オフィシャル(いわゆる審判)を呼びます。Justinが状況を説明した後に、こう尋ねました。

「この状況で、このボールを打ってペナルティーにならないか?」

すると、そのオフィシャルはこう答えたのです。

「I think you will not get the penalty」

そこで、Justinはさらにこう尋ねました。

「Do you think?」

すると、オフィシャルはこう答えたのです。

「Yes, I think you will not get the penalty.」

少しの間の後に、Justinはこう言ったのです。

「I need a second opinion.」

その呼ばれたオフィシャルのさらに上位のオフィシャルを呼び、そのエグゼクティブオフィシャルに同じことを確認したのです。「この状況で、このボールを打ってペナルティーにならないか?」
エグゼクティブオフィシャルはこう返しました。「No, you will not get the penalty.」

それを聞いて、Justin Thomasはようやくアドレスに入ったのです。(実はそのやりとりの間にも少しずつボールは動いていたのですが)

何が問題だったのか?

さて、ここで一つポイントを付け加えなくてはなりません。実は、最初に呼ばれたオフィシャルは、そのルックスと英語のアクセントから判断するにおそらく日本人のオフィシャルです。

日本語においては、「私はこう思う」という表現は、断定を避け、丁寧な表現の一つとして日常使います。しかし、グローバルなやりとりにおいては、「I think」 という表現は、あくまで話者がそう思っていると言うことを述べているに過ぎず、一つの見解であると言うことになります。

つまり、この13番ホールの例で言えば、Justin Thomasはルールを確認しているわけです。別の言い方をすれば、Justin Thomasは、オフィシャルの考えを聞きたいわけではなく、「このまま打って問題無いか?」と言う点について、事実あるいは判断を聞きたいわけです。そこで、"I think"という表現をされてしまうと、「(この一打に数万ドルがかかっているわけですから)公式な見解をはっきり聞きたいわけで、個人的な主観を言われても困る」のです。さらにいえば、単に考えや意見を聞かれているならまだしも、厳然たる判断を求められている状況で"I think"という表現をすると、「ああ、この人は自信がないのだな」あるいは「責任逃れをしようとしているのか」という受け取られ方をしてしまうのです。

ご本人がどのような意図で"I think..."という表現をされたのかどうかはわかりませんが、少なくともオフィシャルを務めているわけですから、ルールには通暁しているはずですし、そのルールに基づいて判断を伝えたのだと思います。しかし、"Yes" "No"で始まらずに"I think"で始めてしまったために、残念ながら、プロフェッショナルな言動と見なされずに、上司であるエグゼクティブオフィシャルの出番となってしまったわけです。
さて、そのJustin Thomasですが、残念ながら、バンカーの淵から打ったショットはグリーンを大きく17ヤードもオーバーし、ダブルボギーとなって首位争いからの脱落となってしまったのでした。
ちなみに、10番ホール パー4でティーショットを大きく林の中に曲げ、右打ちのJustinが左打ちで放った林からの脱出のショットは素晴らしいものでしたが・・・。

リラックスしながら、休日の朝にTVで中継を見ていたのですが、グローバルと日本のコミュニケーションギャップを目の当たりにした瞬間でした。弊社がご提供しているグローバルコミュニケーションのワークショップでは、細かいことではありますが、我々日本人が無意識に招いてしまっているこのような状況をケースシナリオとして取り上げ、それがなぜ起こるのかという理由、さらに具体的にどのように対処するべきかにもアプローチしています。
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