コロナ禍が引き起こす反都市化とワークライフインテグレーションの中で,どのような生き方を選びますか?
[更新: 2021年03月31日 / カテゴリ:
キャリア自律]
2020年から始まり、いまだに続くこのコロナショックは、おそらく今から5年~10年後から見たときに、あらゆる意味で社会構造の大転換のきっかけだったと振り返っていることでしょう。
ここでは、何が今(2021年3月時点)にまさに起こっていて、そしてこれから何が起ころうとしているのか、そして、それがどのような影響があるのかを稿を分けて論じていきたいと思います。
もちろん、すべての業態・職種にあてはまることではありませんが、働き方という観点からは、コロナショックにより、「働く空間が否応なく物理空間から仮想空間に転換させられてしまった」というのが、今まさに起こっていることだと言えるでしょう。テレワークで長時間の通勤から解放され、家族との時間が増え、仕事の効率も上がり、Zoomなどのツールで効率的にビデオ会議をこなす働き方の快適さにあっという間に親しんでしまい、むしろ、電車でわざわざ2時間近くかけて都心のオフィスまで移動したり、あるいは各地にある顧客を訪問していた以前の生活を思い出せないくらい、便利で快適になったという感覚を持っている方は実は非常に多いのではないでしようか。しかし、なぜ、我々はこの急激な変化をスムーズに受け入れることができたのでしようか?以前からよく言われているように、これは未曾有の危機が起きた際の日本人のレジリアンス的な特性と考えることもできるかもしれません。しかし、WorldArxは、そこにはより本質的な理由があると確信しています。それは、すでに何年も前から【日本企業の伝統的な働き方は既に破綻していたのではないか】ということです。高度成長期に形成された日本企業の「当たり前」が実態とズレてきているにもかかわらず、価値観の修正がなされずに現場が苦しんでいるケースを多く見聞きしますし、現に経営者から弊社への相談も非常に増えています。そうした組織の矛盾や制度の経年劣化が、今回のコロナショックという大きな地殻変動により顕在化し、可視化され、否応なしに変化を迫られているのです。これはまさに、「働き方」の前提となる価値観を含めた「当たり前」が不可逆的に変わったということに他なりません。
では、なぜ、そしてどのように日本企業の「当たり前な働き方」に無理がきていたのか。それは、インターネットの浸透と産業の変化つまりデジタル化に日本社会が順応できてこなかったということに尽きます。これだけICTが進歩し、職業や職種が多様化したにもかかわらず、日本社会は依然として高度成長期の製造業を主流とする価値観と働き方を前提にやってきていたからです。
より具体的に整理をすれば、コロナショックで明らかになった「働き方」の変化は、次の3つに集約されるように思います。
①中央集権・トップダウン依存型から自律分散型の働き方へ
・前例主義的・中央集権的な指示命令・意思決定システムをもとにした「考えなくても良かった時代」を引きずったマネジメントのありかたやモノリシック(単一的)な企業文化を持つ大企業が維持できなくなる
・今後はテレワーク環境で個々人の自由度や裁量が増え、結果として自律的にOODAループで柔軟に考え・実行する個人やスタートアップの存在感が増す
②時間労働から価値労働へ
・今後はテレワーク環境で個々人の自由度や裁量が増え、個人の労働が、費やした「時間」ではなく、産み出した「価値・成果」で評価・諮られる。
③アナログからデジタルの価値観へ
「空気」「同調圧力」「威厳」「心理的な駆け引き」「盲目的な服従」「一方的な指示」「閉鎖性」「組織階層」といった、リアルな労働空間では大きな意味を持っていた要素が、働き方のデジタル化により、企業内のみならず、企業を超えた顧客との関係性の中においても、働く人々の価値観に影響を与え行動レベルでの転換を迫る。
いま皆さんの周囲で起きている「働き方」の変化も、こうした流れの中での起こっていることと捉えることができるはずです。これらの変化は実は以前から個人の内部や現場で長い時間をかけてゆっくりと蓄積されてきた変化へのエネルギーであり、それがコロナショックによって、一気にマグマが噴出することになったわけです。
しかし、変化が本質的なものであるがゆえに、職場では衝突や軋轢も生まれているようで、一種の反動も見られます。
ワクチンが行き渡り、コロナショックが社会的に落ち着いたタイミングで、先ほどあげたような大企業でも、そしてその取引先である多数の会社でも「昔のやり方がやはり一番だ」と新しい働き方に順応できない人たちを中心とした、以前の働き方に戻そうとするムーブメントが必ず起こるでしよう。しかし、それは明らかに社会の生産性を下げる老害的なノスタルジーに過ぎません。WorldArxは、これからの個人の幸福のためにも、日本経済の復活のためにも、そうした「ノスタルジックな反動」を明確に拒絶しなければならないと考えています。
では、次稿では「働き方のデジタルトランスフォーメーションと反都市化(Dis-Urbanization)が引き起こすWLI(ワークライフインテグレーション)の加速」について、考察してみたいと思います。