ジョブ型という幻想に飲まれるな──キャリアは自分で設計する時代
[更新: 2025年03月31日 / カテゴリ:
キャリア自律]
最近、メディアでも人事制度でもやたらと聞こえてくる「ジョブ型雇用」。
“専門性で評価される時代”
“スキルが報酬を決める”
“自分の強みで戦える”──そんな前向きなフレーズが並びます。
弊社も様々な企業におけるジョブ型人事制度への移行をわずかではありますがご支援させて頂いてきました。
その経験から、すべての企業がそうだとはもうしませんが、実はその前向きな言葉に包まれた、組織側の都合が透けて見えてくることがあります。
それは、日本の企業がジョブ型に踏み出す「本当の理由」は下記のような理由があるように見えるからです:
- 年功賃金の圧縮
- 退職金制度の簡略化
- 男女賃金格差の調整(=男性給与の引き下げ)
- スキルが変わらない中高年層への対応
つまり、言い方は非常に悪いですが、これは企業にとって都合のいい『雇い方改革』にすぎないという側面が否定できないのです。
実は、日本企業が絶対に手放さない“聖域”があります。それが、
- 新卒一括採用
- 選抜型タレントマネジメント
企業は毎年、「素材」として若者を大量に採用し、様々な現場を経験させてポテンシャルを見極めます。そして、ごく一部の“選ばれし人材”だけが、経営層候補として水面下で“抜擢の対象”として扱われはじめるのです。これは、昭和でも令和でも、変わっていません。では、問題は何か?
“選ばれなかった人たち”をどう処遇するか、企業側も困っているのです。そこで登場するのが、“ジョブ型雇用”という名の対応なのです。毒舌であることを自覚しながら敢えて書きますが、選ばれなかった人たちは、“専門職”という名のジョブに静かにあてがわれ、昇進も昇給もない塩漬け型ジョブ型雇用に取り込まれてしまうのです。
- 異動はない。
- 昇格もない。
- スキルの幅も広がらない。
- 給与は上がらない。
- 本人も、まぁこのままでいいやと考え、日常に安住し、スキルレベルが下がっていく
そして、数年後に自分より若くて安くてスキルのある人材や、生成AIに置き換えられていく。
さらに、その企業の経営者は、胸を張ってこう言うでしょう。
「ええ、我が社は日本の雇用慣習に根差したジョブ型雇用に完全に移行して運用し、人的資本を最大限活用しています」と。
制度としては成立している。けれど、そこで起きているのは“見えないキャリアの分断”です。
ではどうするか?答えはシンプルです。
“選ばれるか選ばれないか”のを待つのではなく、自分の意思で“選び取る”。
- 今のジョブに手応えがあるなら、それを磨き、もっと良い環境・待遇でできる場所に行く
- 逆に、自分の価値が曖昧だと感じるなら、今すぐ見直して「磨けるジョブ」を探す
会社に「評価してください」と願い出るのではなく、市場に「買わせにいく」発想が必要です。
それが、能動投資型ジョブ型──自らのキャリアに投資し続ける、たくましいプロフェッショナルの姿勢です。
たとえ今の会社がメンバーシップ型であっても、ジョブ型に移行しようとしていても、そこで得られる経験やスキルが、“他社や社会でも通用する”ものであれば、それは選ぶ価値があるということです。
- 業界最先端の知識や経験が身につく
- 社外でも評価されるプロセスや成果を積める
- 汎用性の高い専門スキルを伸ばせる
そんな環境がそこにあるなら、「この会社のこの仕事を、キャリア資産を増やす手段としてたくましく“利用する”」という覚悟で徹底的にやるべきです。
「転職すべきか迷っています」という人がいます。
でもその問いは、こう置き換えるべきです:
「今の会社にいることで、自分の市場価値は上がるか?」
答えがNOなら、それはもう「投資対象としての自分」が沈んでいるということ。転職は、自分のキャリア資産を“運用し直す”行動の一つです。
自分の人的資本は自分で管理する。考えてみれば、極当たり前の事なのではないでしょうか。
もちろん、今の会社で自分のキャリア資産をしっかり計画できるなら、それに越したことはありません。転職は目的ではなく、あくまで様々な選択肢の一つに過ぎないからです。
ジョブ型時代において求められるのは、「正解を選ぶ力」ではありません。むしろ、
- 失敗してもやり直せる柔軟性
- 自分で自分を育てる習慣
- 会社に飼われず、自分を評価できる眼差し
つまり、しぶとく、したたかに生きる“たくましさ”です。
- 聞き心地の良いジョブ型は、あなたの味方とは限らない。
- 新卒一括採用と選抜型マネジメントが残る限り、塩漬け型のリスクは常にある。
- キャリアは「選ばれるもの」ではなく「設計し、リスクを取り、選び取るもの」。
- 「自分で育つ力」が、これからの最大の武器になる。
- そして、自分のキャリアを漫然と考えないこと。
何となく居心地がいいから今の場所に留まる──その“何となく”が、将来の選択肢を削っていく。
取れるリスクは、意識して“取りに行く”。
たとえそれが小さな一歩でも、「自分で決めた」という事実が、未来を変える圧倒的な推進力になります。